朝から今にも降り出しそうな低い空、檀家様のお参りから帰宅するや否や降り出してまいりました。境内の緑は雨に洗われ、特に若葉が目に優しく一段ときれいです。 さて、本日の住職のお話、檀信徒様及びホームページにお越し頂いている皆様には、誠に申し訳なく存じますが、ある一人の御婦人に向けて発信させて頂きたく思います。ご容赦の程お願い申し上げます。 お名前をお伺いもせず、お会いできなくなってしまった、年の頃なら60代後半、シルバーグレーの御髪が上品な御婦人・・・仮の名を「アスカ」様と致します。 お仕事場が當寺のご近所で、人様のお話を聴くお仕事で、「傾聴」と言う職業だそうです。 當寺の一願不動明王にちょくちょくお参りにお見えになられており、幾度もお見かけは致しておりました。 今年の初め頃、お声をかけてこられました。「ホームページお作りになられましたね。ご住職のお話、いつも楽しみに拝見させて頂いております。失礼ながら、これまで、少しご住職のお人柄を誤解しておりました。言葉を交わせるような感じがなくて・・でも、住職のお話を読むようになり、気さくなあたたかい方と知り、一度お話をしてみたいと思い、今日は思い切って声をかけさせて頂きました。」 どなた様も、声すらかけにくい、気難しい愛想のないイメージを持たれます。それは自身でも納得の出来ることであります。口下手で不器用故、社交性もありませんし、自身から話しかけることも苦手であります。 しかし、ペンを持つと、自分らしく思ったり感じたりすることが何とか表現できるので、ホームページを立ち上げる際、住職の話として、皆様に発信させて頂くことを決めました。 話が横道に逸れましたが、アスカ様とはそれから世間話や、私の知らない世界のお話、色々なことを教えて頂きました。とても聡明でお話が的確で、立ち話でほんの数分足らずの中、本当に学ばせて頂けました。尚且つ、あたたかく、優しい心の持ち主で、癒しの方でもあります。 桜が蕾の頃のことです。「病気が見つかりまして、お仕事を辞めるかも知れません。すぐではないのですが。今までお仕事優先で、可愛い孫たちとの時間がほとんどなかったので、これからは出来る限り孫たちと楽しく過ごしたいので、それもあり、辞めようと思っております。」そのようなお話をされておられました。その時が、アスカ様をお見かけした最期となりました。 あらゆる事に、ほとんど後悔をしない私ではありますが、今回は後悔があります。何故、最期にお会いしたとき、お仕事を辞めること伺いながら、お礼の言葉すら言わなかったのか・・・ある事を思い出しました。ホームページの住職の話をご覧下さっているとの事、それを思い出しました。 ホームページを通して、ひと言お礼を申し上げたく思いました。 「アスカ様。ご病気の完治をお祈り致しております。貴女との立ち話、楽しくもあり、有意義でもありました。人として、色々学ばせて頂きました。これから僧侶という「職業」にも役立たせてまいります。 お孫さんと幸せな時を、たくさんお過ごしください。ありがとうございました!」 住職のお話として、私的な文章を、今一度、皆様にお詫び申し上げます。 一期一会を大切に生きてまいりたく思います。勿論、感謝を忘れることなく。 雨に洗われた清々しい緑に感謝。雨にも感謝。 合掌 2013年(平成25年) 5月吉日
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